宮大工の視点で組み立てる調査と設計の流れ
株式会社和昇が手がけるプロジェクトは、建物の状態を正確に読み取る現地調査から始まる。外壁や屋根の目視にとどまらず、小屋裏や床下など普段は人の目が届かない箇所まで入念に確認し、構造上の課題や経年劣化の進行度を洗い出していく。調査結果は写真や図面とともに施主へ共有され、改修の優先順位や費用感をすり合わせるための土台になる。新築・改修を問わずプラン図の作成から工事内容の詳細検討まで、宮大工としての知見を反映した設計提案が一連の工程に組み込まれている。
個人的には、調査段階からここまで丁寧に情報開示してくれる工務店はそう多くないと感じた。施主側が「どこをどう直すのか」を具体的に把握できるため、見積もりの妥当性を自分で判断しやすい構造になっている。設計段階では施主の要望を細かくヒアリングしたうえで伝統建築の意匠と現代の使い勝手を両立させる方針がとられており、打ち合わせの回数に上限を設けていない点も施主から好評だという。宗教建築から住宅まで対象が幅広い分、提案の引き出しが多いところは依頼側にとって心強い。
神社・寺院建築に宿る宗教的背景への理解
神社の施工では、本殿や拝殿だけでなく瑞垣・鳥居・灯篭・賽銭箱といった境内を構成する細部にまで手を入れる。神域としての統一感を崩さないよう、素材の選定から木組みの仕口まで一棟ごとに検討を重ねるのが株式会社和昇の進め方だ。寺院建築では七堂伽藍の配置思想を踏まえた本格的な仏教建築を得意領域とし、庫裡や位牌棚のような付帯施設についても規模を問わず対応している。建物が担う信仰上の役割を施工者自身が理解しているからこそ、完成後の空間に緊張感と静けさが同居する。
ある住職からは「建物の用途や宗派ごとの作法まで汲んだうえで提案してくれるので、こちらが細かく指示しなくても意図がずれない」という声が寄せられている。実際、宗派による屋根勾配や木鼻の意匠の違いなど、施主が言語化しにくい部分を職人側から確認してくるケースが多いようだ。こうしたやり取りの蓄積が、完工後の「想像どおりだった」という評価につながっているのだろう。神社・寺院いずれの案件でも、宗教建築としての品格を損なわない仕上がりが求められる現場で継続的に指名を受けている。
築100年超の古民家を現代に接続する再生事業
古民家再生では「住み継ぐ家」をコンセプトに掲げ、築100年以上の建物が蓄えてきた風合いを活かしながら断熱・耐震・設備面を現行水準に引き上げる改修を行っている。柱や梁に残る手斧の痕跡や煤けた色味をあえて見せる設計にすることで、新建材では出せない時間の厚みを室内に残す手法がとられる。住宅用途に限らず、古民家カフェや宿泊施設への用途転換も提案の範囲に含まれており、商業・観光分野での活用実績も増えつつある。建物の履歴書ともいえる構造材の状態を調査段階で正確に読み解けるのは、宮大工の技術体系を持つ施工者ならではの利点だ。
たとえば店舗転用の案件では、既存の土間空間をそのまま客席に活かし、厨房設備だけを新設するといった最小限の介入で開業にこぎ着けた事例がある。オーナーの初期投資を抑えつつ、建物本来の空間構成を商業的な強みに転換するという設計判断は、古民家の構造を熟知していなければ難しい。株式会社和昇では再生後の維持管理についても相談を受け付けており、木部の経年変化に応じた塗装や補修のタイミングを助言する体制を敷いている。再生して終わりではなく、建物の寿命をさらに延ばす視点が事業全体に組み込まれている。
経歴不問で門を開く職人育成の方針
株式会社和昇では宮大工の採用にあたり、学歴や性別、経験の有無を問わない方針を明確に打ち出している。重視されるのは困難な作業に粘り強く取り組む精神力と、技術を吸収し続ける向上心の二点だ。未経験者は見習い期間から現場に入り、先輩職人の作業を間近で見ながら道具の扱いや木材の性質を身体で覚えていく。一人ひとりの習熟度に合わせて担当工程を段階的に広げる仕組みのため、無理な詰め込みによる離職を防いでいる。
職場の雰囲気について「年齢や経験年数に関係なく質問しやすい空気がある」と話す若手職人の声が目立つ。厳格な徒弟制度のイメージが強い宮大工の世界で、風通しの良さを意識的に維持している点は採用面でも差別化要因になっているようだ。伝統技術の継承という長い時間軸で見れば、入口のハードルを下げて多様な人材を迎え入れる姿勢は合理的な選択といえる。現場での実地指導と自由に聞ける環境、この二つの掛け合わせが株式会社和昇の人材輩出を支えている。


