製炭炉の販売から始まる炭化技術の普及
農業現場でバイオ炭を自前でつくりたいという需要に応えるため、株式会社HATSUTORIは製炭炉の開発・販売を事業の柱のひとつとしている。流木や林地残材のような扱いにくい素材にも対応できる炉の構造を自社設計し、温度・酸素を精密に制御できる機構を搭載している。空気の流れと熱伝導を細部まで設計することで炭素固定率を高め、安定した炭質を量産できる体制を整えている。小規模農家から大規模施設まで対応できる操作性と安全性にも配慮した製品設計が、導入の障壁を下げている。
製炭炉の導入を検討する農業法人や森林組合からの問い合わせには、製品の説明だけでなく、炭化工程の具体的な運用まで含めた情報提供を行っている。「炉の操作が想定より難しくなかった」という声も聞かれる。自前での炭化体制を持つことで、地域の廃木材を継続的に活用する仕組みが現場に根付きやすくなる。
流木回収が生み出す、二重の環境効果
ダムに堆積した流木は水の流れを妨げ、腐敗が進めば水中の酸素量が低下して魚類や微生物の生息環境を脅かす。その流木を回収して炭化することは、河川・湖沼の環境改善と農業用バイオ炭の確保を同時に達成する取り組みだ。廃材を焼却処分する場合と比べ、炭化工程での二酸化炭素排出は大幅に少なく、土壌に施用した後は炭素が長期間固定される。環境保全と農業支援が同じプロセスの中に同居している点が、この事業の構造的な強みだ。
バイオ炭を土壌改良材として使用する農家からは、「保水性が向上し、水やりの頻度が変わった」という報告があるという。使用後も環境中で安定を保つ特性は、コストの観点でも一定の評価を受けている。
宮崎を拠点に据えた意味と地域への視線
宮崎県は豊かな森林資源と河川を持つ一方で、台風や豪雨の影響を受けやすい地域でもある。流木の発生が多く、その処分に課題を抱えているという地域の現状が、株式会社HATSUTORIの事業が宮崎を起点とする背景にある。地域の廃材資源を原料に製品をつくり、農業の現場に届ける流れは、地産地消の資源循環モデルとして地域経済と直接結びついている。木材の収集から炭化・販売に至る工程が地域に雇用を生む産業として機能する点も、事業の社会的意義を広げている。
正直、宮崎という場所がこの事業のフィールドとして非常に理に適っていると感じた。廃材という地域課題を、そのまま製品の原料として引き受ける事業設計の整合感は際立っている。
生産者の声を炭に反映するサポート体制
農業の現場では、土壌の状態・作物の種類・気候条件が異なり、バイオ炭の最適な施用方法も一律ではない。株式会社HATSUTORIでは生産者との直接対話を大切にし、粒度・使用量・施用時期などを農地の実情に合わせて調整した上での納品を行っている。問い合わせ対応は24時間受付体制で、製品導入後の相談にも継続して応じる姿勢を持っている。農地での効果が出るまでの時間差を理解した上で、長く関わり続けることを前提とした対応スタイルをとっている。
「最初の使い方に迷ったが、具体的に教えてもらえて安心した」という声が寄せられているという。季節ごとの土壌の変化に応じた相談が続くケースも多く、導入後のやり取りを通じて信頼関係が育まれているようだ。


